糞爺

今から数年前のある日、実家の駐車場に新聞紙が敷かれ、その上に何らかの動物の糞が置かれているのを母が発見した。
最初は軽いイタズラかと思っていたが、それからというもの、毎日のように続いた。
次第にエスカレートして、車のボンネットに糞がばらまかれたりするようになった。


深夜から早朝にかけての犯行のため、待ち伏せするには体がもたない。
そろそろ苛立ってきて、防犯カメラでも設置するかと家族で話し合いをしていた矢先
犯人はご丁寧に自分の住所と名前が書かれた封筒に糞を入れて、郵便受けに投函してきた。

それは二軒隣の家に住んでいる、爺さんYだった。


Yは癇癪持ちというかキ印というか、近所でも有名なトラブルメーカーだったため、「あの人か」と合点がいった。


そして糞が投函された翌日の早朝のこと、玄関のインターホンが鳴らされた。
また、何を言っているかわからないが、とにかくわめき散らす声が聞こえた。


母が玄関のドアを開けるなり悲鳴をあげて戻ってくる。
なんと、Yが鎌を片手に上がり込んで来ていた。
すかさず兄が玄関へ走る。


鎌を持っているとはいえ相手は耄碌した爺さん、兄は格闘技経験もある屈強な体つきの青年。やられる心配は無いだろう。
対応は兄に一任して、私達は死角で固唾を呑んだ。


Yの意味不明なわめき声と、激昂した兄の怒声が響き渡る家。


Y「7.、'ja@tjg(,1〒3☆ピ46!!!!!」
兄「お前はさっきから何を意味わからん事言っとるんや!早く帰らんと警察呼ぶぞ!」
Y「hrs#7○896tた5wg.ま!!!」
こんな不毛な問答が小一時間続き、ようやくYは帰って行った。


戻ってきた兄は一枚の紙を持っていた。
それは、Yの手書きによる誓約書だった。


以下、内容を意訳

お前の家の猫が、ワシの畑でうんこをする!
次に見つけた時は、捕まえて保健所に連れて行く!
もう二度と家から猫を出しませんとサインしろ!

ようやく一連の犯行の動機が分かってホッとすると同時に、呆れて笑ってしまった。

何故なら、私達は猫を飼っていなかった。f:id:vanitasvanitatum:20170524133159j:plain