糞爺

10年以上前のある日、実家の駐車場に新聞紙が敷かれ、その上に何らかの動物の糞が置かれているのを母が発見した。
最初は軽いイタズラかと思っていたが、それからというもの、それが毎日のように続き
次第にエスカレートして、停めてある車のボンネットに糞がばらまかれたりするようになった。


深夜から早朝にかけての犯行のため、待ち伏せするには体がもたない。
家族一同が理不尽さにそろそろ苛立ってきて、防犯カメラでも設置するかと話し合いをしていた矢先
犯人はご丁寧に自分の住所と名前が書かれた封筒に糞を入れて、郵便受けに投函してきた。

それは二軒隣の家に住んでいる、Y爺さんだった。


Yは癇癪持ちのキ◯ガイで近所でも有名なトラブルメーカーだったため、「あの人か」とすぐに合点がいった。


そして糞が投函された翌日の早朝のこと、玄関のインターホンが鳴らされると共にわめき散らす声が聞こえた。


母が玄関へ向かうなり悲鳴をあげて戻ってくる。
なんとYが鎌を片手に家に上がり込んで来ていた。
すかさず兄が玄関へ走る。


鎌を持っているとはいえ相手は耄碌した爺さん、兄は格闘技経験もある屈強な体つきの青年。やられる心配は無いだろう。
対応は兄に一任して、私達は死角で固唾を呑んだ。


Yの意味不明なわめき声と、激昂した兄の怒声が家中に響き渡る。


Y「7.、'ja@tjg(,1〒3☆ピ46!!!!!」
兄「お前はさっきから何を意味わからん事言っとるんや!早く帰らんと警察呼ぶぞ!」
Y「hrs#7○896tた5wg.ま!!!」
こんな不毛な問答が小一時間続き、ようやくYは帰って行った。


戻ってきた兄は一枚の紙を持っていた。
それは、Yの手書きによる誓約書だった。


以下、内容を意訳

お前の家の猫が、ワシの畑でうんこをする!
次に見つけた時は、捕まえて保健所に連れて行く!
猫を殺されたくなければもう二度と家から猫を出しませんとサインしろ!


ようやく一連の犯行の動機が分かってホッとすると同時に、呆れて笑ってしまった。

何故なら、私達一家は猫を飼っていなかった。

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