顔のない女
子供の頃、毎週のように母方の親戚の家に遊びに行っていた。
家には私と同世代の姉A、弟B二人の子供がいた。
ある日いつものように遊びに行くと、Bが某キャラクターのぬいぐるみを買ってもらっていた。
大好きなキャラクターだったため、その日私はずっとぬいぐるみと遊んでいた。
夕方になり母親がそろそろ帰るよと言い出したが、ぬいぐるみから片時も離れたくない私は、二階のBの部屋まで一人で片付けに行った。
二階には二つの部屋があり、階段を上って手前がAの部屋、奥がBの部屋で、古い家屋のためか、ふた部屋とも入り口はすりガラスの引き戸の和室だった。
Aの部屋の引き戸が開いており、中を覗いた。
奥行きのある広い部屋に、学習デスクとベッドが置かれていただけだったと思う。
そしてBの部屋に入りぬいぐるみを置き、帰り際またAの部屋をチラッと覗いた。
すると、つい今まで無人だった部屋の中に、頭が天井に着きそうなくらい高身長で、赤い着物を着た顔のない女がこちらを向くように突っ立っていた。